現在日本で行なわれている牛の飼育方法は、「スト-ルバーン」と呼ばれる方法と、「フリーストールバーン」と呼ばれる物の2つの方法が主流です。
ストールバーンは、牛舎の巾のストールと呼ばれる囲いの中に、ロープなどで繋ぎ飼いする方法です。
フリーストールバーンは、放牧地を囲む休息場・餌場・搾乳場を、牛が自由に行き来し、特定の時間になると、牛が次々と搾乳場にやって来る方法です。
スタンチョンや、チェーン、ロープなどで牛をつなぎ止めて飼育する方法の牛舎で、日本の大部分の搾乳用の牛がこの方法の牛舎で飼われています。
いつもつながれている牛は、さぞ窮屈だろうと思われるかも知れませんが、一頭一頭の牛に目が行き届き、健康状態などが良く観察できる利点があります。しかし、牛の管理が大変なので、1家族だけの牧場では、50頭くらいの搾乳牛を飼育するのが限界です。
●メリット
・牛の能力や、状態に合わせて個々に牛の管理ができる。
・目が行き届き、健康状態などがよく観察できる。
・飼料の損失が少ない。
・発情や、異常の発見がしやすく、処置も早くできる。
・牛同士の競合や、闘争が少ない。
●デメリット
・管理に多くの労力を必要とする。
・建築コストが割高になる。
休息場所にフリーストールという、牛をつなぎ止める施設がない、牛が自由に出入り出きる区画を備えた放し飼い式の牛舎です。
今までの区画のない、普通型の休息場よりも、個々の牛の休むところが込み合わず、清潔が保てる・敷料が少なくて済む・ボス牛や、発情牛が、他の牛の行動を妨害しにくい、などの利点がありますが、広い土地が必要である事など、日本の事情に合わないところが多いためあまり普及しませんでした。
しかし、最近になって、規模拡大の方法として、この方式が注目を集め、県内でも少しずつ増えて来ています。
●メリット
・牛は、比較的自由な行動ができる。
・個々の牛の休息場が複数出来るので混み合わず、清潔が保てる。
・建築費が比較的安く済む。
・管理の労力が削減できる。
●デメリット
・きめ細かな管理がしにくい。
・広い敷地が必要である。
昭和40年頃までは、一戸の酪農家の飼育する牛の頭数が2~3頭で、一年間の生乳産出量も4,000kg位でした。この頃は、少数の牛から丹念に「手しぼり」で一頭一頭搾乳していました。しかし、酪農経営の規模拡大や、乳牛の改良が進むと、大量の乳を手間を掛けずに搾る必要が生じ、機械搾りへと移行して行きました。
親指と人差し指で乳頭の付け根を強く締めて、残りの指と拳で乳頭を圧迫し、乳を押し出す加圧式搾乳法。
子牛は母牛の乳房を吸うように、ティートカップ内を真空にし、陰圧によって乳房からちちを吸い出す方法。
貯乳タンク付のミルカー。持ち運びながら搾乳します。
ミルカーで搾られた乳を、ミルクパイプでバルククーラーへ自動的に運びます。
酪農家は普通、朝夕の2回の搾乳を行なっています。
乳を搾る際には、音楽を聞かせたり、餌を与えたりして、牛をリラックスさせ、気持ち良く乳を出せるような工夫をしている農家もあります。
又、搾乳の施設としては、牛から搾った乳を牛乳処理室まで直接パイプラインで送る『パイプラインミルカー』が省力的なので、中規模~大規模経営の牧場で多くつかわれています。このパイプラインミルカーには、牛舎の中に取り付けられる『カウシェード用パイプラインミルカー』と、搾乳専用室で使用される『ミルキングパラー用パイプラインミルカー』があります。
日本の乳牛の多くは、つなぎ飼い式の牛舎で飼育され、パイプラインミルカーを使って搾乳されます。
酪農家は普通、朝夕二回の搾乳を行ないますが、この時一人で2~3台の搾乳機(搾乳ユニット)をあやつりながら、2時間くらいの間に2人で30~50頭の牛を搾乳します。
繋ぎ飼い式牛舎では、牛舎自体が搾乳場所ですが、牛を繋いで飼わないフリーストールバーンの様な飼育の場合は、ミルキングパーラーと呼ばれる搾乳機専用の施設を使って搾乳します。
この方法の利点は、搾乳の時間が来ると、牛が自分から乳をしぼってもらう為に、作業員の待機しているミルキングパーラーに次々とやってくるので、搾乳する人の移動が少なく、能率的に作業できることです。
乳牛の餌には大きく分けて「粗飼料」と「濃厚飼料」の2つがあります。
「粗飼料」は健康な生活を維持するための基本食といえます。また、「濃厚飼料」は乳牛の好みに合うものが多く、栄養素を多く含む飼料のことをいいます。
「粗飼料」と「濃厚飼料」を毎日バランスよく食べさせる事が牛の健康や乳質の向上のために必要なのです。
牧草、青刈り作物、野草や藁などで、繊維質が豊富で、第1胃を正常に保つ事や、発酵を助けると共に、乳質を良くする働きがあります。
主な牧草の種類
主な青刈り作物の種類
わら類
飼料作物の主な利用方法
サイレージ(アンモニア処理稲藁)
稲藁は、牛の消化活動を活発にする繊維質の餌として、昔から使われていますが、栄養価は牧草の半分位です。しかし、これを1.5%~3%のアンモニアで処理すると、蛋白質が増え消化率が向上するうえ、牛の好みに合い、良く食べるようになります。この餌をサイレージといい、サイロでつくられます。
トウモロコシや、アルファルファなど、蛋白質や炭水化物脂肪などの栄養素を含む餌で、高カロリーが特徴です。
単味飼料
配合飼料