牛の一生は、「誕生」に始まり、「子牛時代」
種付け直前までの「育成牛」
種付けされて初めての妊娠をした「未経産牛(若牝)時代」
出産して「経産牛」となり、乳を産出すると、「搾乳牛」と呼ばれようになります。
そして、10ヶ月~12ヶ月の間、乳を搾る事が出きるようになります。この搾乳期間に次のお産の為の交配を行い出産の時期が近づくと、搾乳を中止して牛の体に栄養を蓄えさせます。この時期の牛を「乾乳牛」と呼びます。
乳牛は、分娩~搾乳牛~乾乳牛というサイクルを何度か繰り返し、牛乳の生産量が低下したり、次の妊娠が出来なくなったりすると、経済動物としての一生を終わる事になります。
日本では乳牛といえば、黒白模様の「ホルスタイン」がその代表格で、約90%を占めています。「ホルスタイン」はもともとは、ドイツの牛ですが、品種として成立したのは、オランダへ移住した移民が連れて行ったのが始まりとされています。
また、このホルスタインの他にも6種類の乳牛がいますが、その牛たちはそれぞれ違った性質や能力をもっています。しかしその数は「ホルスタイン」にくらべてごく限られたものでしかありません。
性質:温和でやさしい牛です。広い範囲の気候風土に適応でき、特に寒さは平気。豊かな草原で生まれた品種なので、草を好みにはちょっとうるさく、“草グルメ”です。
能力:乳量は年間4,500kg~6,000kg。中には10,000kg以上を出す頼もしいママも。乳脂肪率は平均3.5%。
体重:雌は650kgくらい。雄は1,000kgくらい。
黒白斑ホルスタインと同じ起源を持つ牛ですが、斑の色は褐色と白。昔、牛の改良のためにホルスタインとシュートホーンが交配されたことがあり、シュートホーンの遺伝子が褐色と白の斑を伝えています。
体質や能力、体重などは、黒白斑ホルスタインと変わりません。
ホルスタインには、大きく分けてヨーロッパ系のものと、アメリカ系のもの、その中間型の3つのタイプがいます。この中間型がブリティッシュ・フリージャンで、17世紀から18世紀にかけて、オランダからイオギリスに渡った黒白斑ホルスタインが何度も改良されてできました。
性質:身体はやや小柄。ちょっと神経質ですが、世話をするほどになついてきます。活発でキビキビした性質。暑さには強いですが、寒さは苦手。
能力:乳量は年間3,300kg~4,000kg。乳脂肪率は平均5.1%。
体重:雌は380kgくらい。雄は700kgくらい。
性質:おだやかな性質で、身体も丈夫。スイス生まれの品種なので、寒さに強く、高冷地で放牧されても平気です。ヨーロッパ型とアメリカ型がいます。
能力:ヨーロッパ型のものは、年間の乳量3,200kg~4,000kg。乳脂肪率は平均3.9%。アメリカ型のものは、年間の乳量が平均4,000kg。乳脂肪率は平均4.0%。
体重:ヨーロッパ型のものは、雌が550kgくらい。雄が700~900kgくらい。アメリカ型のもは、雌が600kgくらい。雄が1,000kgくらい。
性質:気候風土をそれほど選ばず、特に寒いところに強い牛です。ジャージーより温和。
能力:乳量は年間3,600kg~4,000kg。乳脂肪率は平均4.9%。脂肪球が大きく、バターやチーズに適したお乳です。
体重:雌で450kgくらい。雄で800kgくらい。
性質:身体の大きさは中くらいで、活発。気候風土への適応力もあり、多少荒れた草地でもたくましく生きていきます。どちらかというと神経質。
能力:乳量は年間4,000kg~4,500kg。乳脂肪率は平均3.9%。脂肪球が小さいので消化率がよいお乳を出します。
体重:雌で530kg、雄で800kg。
乳牛には、初めから備わっている遺伝による性質と、飼育管理によって備わった性格があります。
乳牛にも人間と同じように、神経質なもの、臆病なもの、頑固なものや、気の優しいもの、気の強いものなど色々いますが、乳牛の習性を知ることによって、彼等の行動や仕種にどのような意味があるかが見えてきます。
哺乳器から牛乳が出なくなると、子牛はこれを突き上げることがあります。この行動は、母牛から乳を飲んでいるときに乳が出なくなると、乳房を揉んで乳が良く出るようにするために突き上げる習性があるからです。
乳牛は、牛房(休憩所)に残った自分の体臭などを良く覚えているので、間違えて他の牛房に入ってしまう様な事はありません。
したがって、牛舎の大消毒の後にいったん外した牛の名札を付け直すときも、牛が入った後に取り付けたほうが、人間の記憶であらかじめ名札を掛けておくより確かなことさえあります。
分娩した牛は、毎日乳をしぼられているうちに、牛乳がどんなに大切なものであるかを自然に感知するようです。
良く調教された乳牛は、搾乳中静かにしているだけでなく、アブに刺されてもじっとしている姿を見掛けることがあります。
乳房には、乳腺細胞という乳を作る物があります。これを取り囲む様に毛細血管が分布していて、乳を作る原料が供給されます。
子牛を生んで乳が出始めると、一日に搾れる乳の量は出産後5週間目ごろにピークに達して、その後徐々に乳の量はへってゆきますが、1年で6,000kg以上も乳を搾ることができます。
牛乳は一頭の乳牛から、1年に6,000kgも搾ることができます。
1,000mlの牛乳パックを縦に積んでいくと、実に1,500mの高さになるのです。
人間の体の水分は約70%ですが、牛乳の水分は約87%。残りの13%にさまざまの栄養成分が含まれています。ずいぶん水っぽいなと思われるかもしれませんが、野菜の水分を見てみると面白いことが分かります。
まずきゅうりですが、水分はなんと97%もあります。にんじんで90.4%、カリフラワーで90.6%、かぼちゃで88.9%です。つまり、牛乳はきゅうりやにんじん、カリフラワーよりも固く、かぼちゃとほぼ同じ水分保有ということになります。